1. 抗加齢(老化)研究-1. ナッドプラス(NAD+)

『ナッドプラス(NAD+)抗加齢法』-細胞レベルのエネルギーチャージで老いを止める

抗加齢研究が世界で急速に発展を遂げてきています。

そもそも生命体は細胞で出来ています。

細胞の活力がそのまま生命体の活力に影響します。

細胞が働くためにはエネルギーが必要ですが、体内でのエネルギー産生に必須なのが、細胞内の低分子であるコエンザイム(補酵素)ナッドプラス(NAD+:ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド、同じニコチンが出てきますがタバコのニコチンではありません。ここでは、引き続き独自に「ナッドプラス」と呼びます。) です。

このナッドプラス(NAD+)は年齢と共に減少し、50代では20代の半分にまで低下していると言われています(参考論文1)。

この加齢によるナッドプラス(NAD+)の量の低下が、数多くの老化性疾病の原因ではないかと注目が集まっています。

ところがナッドプラス(NAD+)には細胞膜透過性がなく、哺乳類(ヒトを含む)ではトランスポーターも存在しないことから、ナッドプラスを栄養素として直接的に吸収・取り込むことが出来ないため、生体内でトリプトファンやナイアシン(ニコチン酸とニコチンアミド)を材料として生合成が行われて生成されています。(参考論文2)

そこで、不足するナッドプラス(NAD+)を補うために体内でナッドプラス(NAD+)に変換されるナッドプラス(NAD+)の前駆体といわれる低分子のNR(ニコチンアミドリボシド)やNMN(ニコチンアミドジヌクレオチド)を体内に取り入れるという発想が出てきました。

動物実験では、体内でNMNがすぐにナッドプラス(NAD+)になることが確認され、NMNやNRの研究が急速に拡大しています。

またNMNはサプリメントとして摂取するのが普通ですが、サプリメント摂取は、腸吸収によりまず肝臓のナッドプラスが上がるのに対して、静脈注射では他の臓器の細胞のナッドプラス量が同じように上昇することが示されています。(参考論文3)

抗加齢研究-ナッドプラスNAD+

 

『ナッドプラス(NAD+)抗加齢法』こそが「老い」に抗う処方箋

動物実験で次々と示される驚きのデータについてご紹介しましょう。1906年にナッドプラス(NAD+)が発見されて以来、体内に豊富にあることや、我々のからだを生存させる分子上の伝達経路に対する重要な役割によって、科学者の注目を集めてきました。動物実験では、体内のナッドプラス(NAD+)量の上昇が、代謝や糖尿病、心臓疾患、神経変性疾患や免疫機能の衰えなどの老齢化疾患の分野で有望な結果を示し、老化を遅らせる特性までも示しました。

  1. 「老化」に対する効果

ナッドプラス(NAD+)は、サーチュインタンパクがゲノムの無傷状態を守りDNAの修復を進めるための燃料です。自動車が燃料無しには走れないのと同様に、サーチュインタンパクを作るサーチュイン遺伝子の活動はナッドプラス(NAD+)が必要です。動物実験の結果によると、体内のナッドプラス(NAD+)量の増加はサーチュイン遺伝子を活性化し、イースト菌や昆虫やマウスの寿命を延ばすことが確かめられています。

 

  1. 「代謝異常」に対する効果

ナッドプラス(NAD+)は、正常なミトコンドリアの機能と安定的なエネルギー供給を保持するのに必要な要素です。老化と高脂肪な食事は、体内のナッドプラス(NAD+)量を減少します。研究によると、ナッドプラス(NAD+)前駆体を摂取することで、年老いたマウスでさえ、食事と加齢による体重増加を緩和し、運動能力を高めることが確認されています。

 

  1. 「心臓機能」に対する効果

ナッドプラス(NAD+)量を増やすことは、心臓を守り循環器機能を改善します。高血圧は心臓発作につながる心臓肥大と動脈硬化の原因となります。マウスでは、ナッドプラス(NAD+)前駆体が心臓のナッドプラス(NAD+)量を増やし、血流不足によって生ずる心臓損傷を防ぎます。

 

  1. 「神経変性疾患」に対する効果

アルツハイマー病のマウスでは、ナッドプラス(NAD+)量の増加が、認知機能を高める脳内の細胞対話を妨げるタンパク質を減少させることが示されています。ナッドプラス(NAD+)量の増加は、脳への血流不足の際に脳細胞死を防ぎます。多くの動物実験モデルで、脳年齢を健康に保ち、神経変性疾患を防ぎ記憶力を向上させることが示されています。

 

  1. 「免疫機能」に対する効果

大人は年をとると免疫機能が衰え、病気になりやすくなり、季節性のインフルエンザや、ましてCovid-19からの回復が難しくなります。最近の研究結果では、ナッドプラス(NAD+)量が、炎症をコントロールし、免疫反応や加齢の中での細胞の生き残りに対して重要な役割を果たしていることが示唆されています。その研究では、免疫障害に対するナッドプラス(NAD+)の治療効果の可能性が提示されています。

 


参考論文

1.Changes in NAD levels in human lymphocytes and fibroblasts during aging and in premature aging syndromes

2.Nmnat3を介したNADの合成経路と老化制御における役割

3.Quantitative Analysis of NAD Synthesis-Breakdown Fluxes