マクロカプセル化膵島の研究重症の糖尿病が、免疫抑制を行うことなく、デバイスの皮下移植で治ることを目指す研究です。
まずは膵島移植の代わりとなることを目指しますが、希望すればいつでもどこでも受けられる治療法として、より多くの人に普及するはずです。免疫抑制が不要というのは免疫隔離を行うからです。デバイスと生体内を半透膜で仕切ると、O2や栄養素は半透膜を通りますが免疫を担う免疫細胞や抗体などはデバイス内に入れない様にすることができます。
また、細胞などをゲルで包んであげると、同様の作用で免疫隔離ができることも分かっています。
我が社のデバイスでは、アガロース(寒天)のゲルを使って免疫隔離をする様になっています。膵島細胞の様に低酸素ですぐに死んでしまう細胞を皮下に植えるためには、低酸素で細胞が死ななくなる様な処置が必要です(皮下は血管が少なく、酸素が少ないことが知られています)。
この作用は肝細胞増殖因子(HGF)が持っていて、HGFには血管新生作用もあるので、最初のうちは低酸素でも膵島細胞が死ぬのを防ぎ、血管が新生されるのに従って血流が良くなって低酸素も改善されますので、膵島細胞が働ける様になる訳です。
従って、HGFを徐放する必要があるのですが、我が社のデバイスでは、架橋したゼラチンを使ってHGFを徐放する様になっています。
マクロカブセル化膵島に限らず、ミクロカプセル化膵島でも(多数の膵島を一度に包むのをマクロカプセル化、1つずつの膵島をそれぞれに包むのをミクロカプセル化と言ってます)、異物反応が長期間の膵島機能を抑制する最大の敵であることが分かっています。
異物反応は生体防御機構の一つで、移植したデバイスなどを線維性の被膜に包んで生体から隔離する様に働きます。
この働きのために、移植したカプセル化膵島が長期間働くことを妨げるのですが、我が社のデバイスでは、非常に異物反応が少ないエチレン・ポリビニルアルコール共重合体(EVOH)を使って表面を修飾することで異物反応を最低限に抑えることに成功しています。