がん治療の常識10項目

がん治療の常識

  がん治療の常識-トップ10項目 がん治療法が決まる前に患者が知っておくべきがん治療の常識     がんの疑い宣告はある日突然 がんの疑い宣告はある日突然やってきます。それは、皆さんが受ける色々な初期検査から始まります […]

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がん治療の常識-トップ10項目

がん治療法が決まる前に患者が知っておくべきがん治療の常識

 

 

がんの疑い宣告はある日突然

がんの疑い宣告はある日突然やってきます。それは、皆さんが受ける色々な初期検査から始まります。それはどんな時かというと、つぎのような2つの場合が多いのではないでしょうか。

ひとつは、からだのどこかが調子が悪いので行ったクリニックや病院で受けた検査の結果としてがんの疑いが見つかる場合です。

もう一つは、会社や地方自治体(市区町村)指定の病院やクリニックで受けた健康診断や人間ドックの結果としてがんの疑いが見つかる場合です。

そうした検査結果をもとに担当医師はあなたに言います。「がんの疑いがあります。精密検査を受けて下さい。」

がん治療の常識


がん精密検査を受けるとは

がんの精密検査を受けるということは、PET検査とがんマーカー検査(血液検査)などを受けるということで、専門の検査病院(画像診断装置のある)やクリニックなどが指定されます。このステップでは、がんの疑いがどれくらい確実性が高いか、あなたはがん専門病院に行くべきかどうかを見極める段階です。

「がん精密検査」を受けるとは


がんの疑い宣告

PET検査やがんマーカー検査などで、がんの疑いが非常に高いと判断されると、あなたは医師から「がんの疑いが非常に高いですから、がんの専門病院に診てもらってください。ご紹介状を出しますから大丈夫ですよ。」というようなことを言われるでしょう。この時に紹介される病院はどうやって決められるのでしょうか。現実的には、担当医師の所属する医療機関の連携病院、担当医師の出身病院や研修を受けた病院、あるいは担当医が所属している学会でお付き合いのある病院などではないでしょうか。そして、この時に紹介される病院が、その後の患者さんの治療人生を大きく左右することになります。

「がんの疑いが非常に高い」です


がん専門が意味するもの

がん専門という病院とはどういう病院のことをいうのかを見てみましょう。

  • 国立がん研究センター付属病院(中央病院、東病院)
  • がん研究会有明病院
  • 各都道府県のがんセンター病院

医師の資格としてのがん専門とはどういうことかを見てみます。

  • がん治療認定医制度(日本がん治療認定医機構の認定)全国約16,000人
    • がん治療の全相(初期診断から終末期医療まで)における標準的な医療内容に関して説明責任が果たせる。
    • 外科治療、薬物療法、放射線療法など各々の専門領域において、その標準的治療に対し、指導医・専門医との連携のもとに適正医療の継続に協力できる医師と認定するに必要不可欠な知識、医療経験を有する。
    • 外科治療、薬物療法、放射線療法など各々の専門領域において、先端医療(臨床開発研究)の内容が理解できる。
  • がん薬物療法専門医(日本臨床腫瘍学会の認定)全国1,200人

「がん専門」という言葉の背景


がんの確定診断

紹介状を持ってがん専門病院又は大学病院などで専門医の診察を受けることになったあなたに次に待っているのは、生検(バイオプシー)などで患部から採取した細胞をより詳細に検査する病理検査です。この病理検査によって、がんの確定診断がなされ、更に各がんのステージが認定されることになります。このがんのステージ診断は非常に重要です。というのもこのステージによって次なる治療法の選択が決まってくるからなのです。

がん標準治療

がん治療はいまでは日本中どこでもほぼ同じ治療が受けられるようになっています。これは国民皆保険(健康保険制度)の賜物です。どのようにしてこのような国民平等の精神が実現されたのでしょうか。それは、学会が定めた治療ガイドラインが大いに役立っているのです。

がん治療学会

がん治療ガイドライン

「がんの標準治療」って何?


がんのステージ毎で提案されるがんの標準治療法は異なります

がんの確定診断を受けた時は、患者さんもご家族も相当な精神的負担を受けます。それに加えて、治療法の提案を受けるのに1ヶ月近くも待たされることが多いので不安は増幅します。しかしそんな時に、どのような治療法が提案されるのかを予習する方法があるのです。それは先程申し上げたがん治療ガイドラインに、どのステージの場合はどのような治療ということが書いてあるからなのです。内容的にはとても専門的で難しいのですが、大体どういうことを言われるのかが分かりますので、待たされる間の不安が少し解消されるのではないでしょうか。

ガイドラインに明記される治療目的

これらのがん治療ガイドラインにそれぞれ明記されているのですが、がん種・ステージ・原発/再発によって治療目的に大きな差があります。しかしその目的は大きく二つでその差がショッキングなのです。

根治を目指す目指さないかがはっきりと書かれているのです。

このようなことがガイドラインには明記されているのです。このことは患者側もしっかり認識した上で治療医の話を聞くことが、患者と医師の信頼関係構築にはとても重要です。ご担当の医師は、ちゃんと学会の出したがん治療ガイドラインに沿って治療法を提案しているということが分かるからです。標準的でないがん治療の位置づけ

日本の医療は保険医療ですから、一般的にはそこで働いている病院の医師は、保険診療以外の治療を勧めるわけにはいきません。したがって欧米ではその存在が認められている一般的ではないがん治療については、日本ではその存在が非常に否定的に見られます。しかし一度世界に目を転じると、日本とは違う取扱いなのに戸惑います。このあたりは、日本では一般的でない治療を受けるのは、あくまで患者様の自己責任の領域ということなのでしょう。


標準的でないがん治療の位置づけに関する日本と欧米の違い

米国第3位の発行部数を誇る時事雑誌U.S.Newsによる2019年米国がん病院ランキングベスト10(Best Hospitals for Cancer)で上位に入る病院の例を見てみましょう。

  1. University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston
  2. Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York
  3. Mayo Clinic
  4. Johns Hopkins Hospital, Baltimore
  5. Dana-Farber/Brigham and Women’s Cancer Center, Boston
  6. Cleveland Clinic
  7. UPMC Presbyterian Shadyside, Pittsburgh
  8. H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute, Tampa
  9. Massachusetts General Hospital, Boston
  10. Northwestern Memorial Hospital, Chicago

第3位に入っているMayo Clinic(メイヨークリニック)で提供されているがん治療とサービスがどのように紹介されているのかを見てみましょう。

  • Biological therapy for cancer(生物学的がん治療)
  • Bone marrow transplant(骨髄移植)
  • Brachytherapy(近接照射療法)
  • Cancer survivorship clinics(予後ケアクリニック)
  • Cardio-Oncology Clinic(がん治療患者向け心臓ケアクリニック)
  • CAR T-cell Therapy Program(Car-T細胞治療プログラム)
  • Chemotherapy(抗がん剤治療)
  • Clinical trials(治験)
  • Cryoablation for cancer(がん凍結融解壊死治療)
  • Individualized Medicine Clinic(個別化治療クリニック)
  • Integrative Medicine(多様的治療)
  • Minimally invasive surgery(低侵襲手術)
  • Palliative care(緩和ケア)
  • Proton therapy(陽子線治療)
  • Radiation therapy(放射線治療)
  • Radiofrequency ablation for cancer(ラジオ波焼灼療法)
  • Robotic surgery(ロボット手術)
  • Sentinel node biopsy(センチネルリンパ節生検)
  • Stereotactic radiosurgery(定位放射線治療)
  • Stop-smoking services(禁煙外来)

日本の病院でのがん治療の選択肢とは大分違う表現の仕方になっています。日本では、保険医療で認めた治療法だけを紹介するのと違って、米国では選択可能な治療法は紹介するということなのでしょう。


米国での標準的でない治療の位置づけ:生物学的がん治療

例えば生物学的がん治療をみてみると次のような内容となっています。DNA画像

  • Adoptive cell transfer
  • Angiogenesis inhibitors
  • Bacillus Calmette-Guerin therapy
  • Biochemotherapy
  • Cancer vaccines(がんワクチン療法)
  • Chimeric antigen receptor (CAR) T-cell therapy
  • Cytokine therapy
  • Gene therapy
  • Immune checkpoint modulators
  • Immunoconjugates
  • Monoclonal antibodies
  • Oncolytic virus therapy
  • Targeted drug therapy

このような種類の治療法があるという風に言いながら、同病院では25種類の治験(Clinical Trials)でのみこれらの治療を試すことができるということになっています。

Mayo Clinicでは、臨床試験(Clinical Trial)という研究的な治療法としてしか、生物学的がん治療を受けることができません。しかし臨床試験というのは、研究ですので非常に厳しい条件を満たした場合のみ受けられ、しかも試験によってはその治療法を受けられないグループに入れられたりします。

 


標準的でないがん治療も合法化した選択肢が広い日本のがん治療制度

あまり知られていないことかもしれませんが、上記のアメリカの事例に比べると、日本では再生医療等の安全性の確保等に関する法律によって標準治療以外でも合法的に医師が実施できる治療法があります。がん免疫治療などの再生医療がそれで、他の標準治療法との併用も可能となり、患者様の選択肢としての自由度も大幅に大きいという素晴らしい特徴があります。つまり、臨床試験以外の選択肢が選べることになっているのです。

再生医療等の安全性の確保等の法律によって、患者様が自由に免疫療法を選択できるのが日本の特長です。しかし、免疫療法についての知識が広まっていないことから、せっかくの日本のメリットを患者さんが活かせないのが現状となっています。

保険医は免疫治療を否定する傾向がある

日本では保険治療が、がん治療ガイドラインとなっていますので、保険医は免疫治療を否定する傾向が非常に強くなっています。それは、病院ではがん治療ガイドラインに則った治療を行っているので免疫治療の経験はほとんどないことから、当然のことであると言えるかもしれません。

標準治療と免疫治療の両方の経験が必要

では患者様にとって、理想的ながん治療医師像というのはどのような医師かというと、それは標準治療と免疫治療の両方の経験を持っている先生ではないでしょうか。残念ながら、病院に勤める臨床医の先生で、このような両方の経験をお持ちの先生は非常に限られているという現実があると思います。ですから、民間のクリニックで、永年にわたってがん治療を行ってきている先生を探すことが必要になってきます。

患者様が決めなくてはいけない現状

どのような治療でもそうなのですが、がん治療では、臨床医は考えうるベストの治療法を提案し、患者様がそれを自主的に選択し決定するという構図になっています。先にも述べましたように、保険治療下でのがん治療は、ほぼがん治療ガイドライン通りの提案となりますので、一定の条件を満たす早期がんの場合は根治的治療を提案され、それらの条件外の進行がんの場合は根治的ではない治療を提案されるという仕組みになっています。患者さんの望むと望まぬとに関わらず、保険治療ではそれ以外の一般的でない治療法についてはお勧めすることがないので、保険外の一般的でない治療法の選択については、患者様自身が調べ、勉強し、決定しなければならないのです。